地球温暖化は危機的状況になっています
北極海氷が融けている
北極では地球平均の2倍のスピードで温暖化が進んでおり、過去35年間で夏季の海氷面積が3分の2に減少するなど、地球温暖化の影響が顕著に表れている地域です。このまま温暖化が進行すれば、2030年には北極の海氷がすべて消失する可能性もあると予測されています。北極海の氷が消失しても海面上昇などの影響はありませんが、海氷がなくなると海面温度が上昇、北極の高気圧が勢力を強めるため、偏西風の蛇行が強くなり、日本でも夏に高気圧が停滞し猛暑に、冬は北極の寒気が南下しやすくなり厳寒・豪雪になる傾向が強くなります。今、日本で観測されている異常気象の背景には、北極圏で進む深刻な温暖化が深く関わっているのです。北極圏で温暖化が進むとグリーンランドの氷床が問題になります。
アメリカ・アラスカ州の“キバリナ”、先住民族を中心におよそ500人が暮らす小さな村は、ほとんどの住民が狩猟や漁業で生計をたてていますが地球温暖化の影響で、移住を迫られています。
グリーンランド・南極の氷床の融解に伴う海面上昇
広大な面積を厚い雪氷で覆われているものを氷床と言い、グリーンランドと南極大陸に存在します。グリーンランドは82%が氷床で覆われており、氷床の厚さは最高3000mを超えています。南極大陸の氷床は地球上で最も大きく平均約2500mの厚さがあり、地球表層に存在する淡水の約90%が南極大陸の氷床に存在しています。この氷床が溶けると海面上昇が問題になり、グリーンランドの氷床が全て溶けると7.2m、南極大陸の氷床が全て溶けると61m上昇すると言われています。
2019年7月にヨーロッパ北部を襲った記録的な熱波は、更に北上してグリーンランドの氷床を襲いました。例年よりも約14~17℃も気温が上昇し、7月30日には24℃を超え、8月1日だけで氷床からの流出量は記録的なものとなり、120億トン以上の氷床が溶けて海へと流れ出しました。温暖化の影響は北半球で顕著にみられますが、南極大陸でも氷床の減少傾向が強くなると考えられています。南極の最高気温は近年上昇傾向にあり、2015年3月には17.5℃を記録しました。その日の東京は15.1℃なので、東京より南極のほうが暖かいことになります。2020年2月8日にはアルゼンチンの研究拠点で18.3℃を記録、翌日の2月9日には最も南アフリカに近いシーモア島で20.75℃を記録、南極史上初めて20℃を超えました。
南太平洋のツバル・キリバス、インド洋のモルディブは水没の危機にあり、世界銀行は2050年にも浸水の恐れがあると警告しています。キリバス政府は国民の海外移住も視野にい入れています。地球温暖化の原因を作ったのは先進国である我々なのに、温暖化に直接的に関与していない国々がその影響を受けています。その国々に私たちは何をすれば良いのでしょうか? まずは2050年のカーボンニュートラルを実現することですが、日本としても希望があれば移民として受け入れるべきでしょう。
写真は2017年に南極のラーセンC棚氷から分離した氷の塊です。大きさがイギリスのウエールズの4分の1という巨大なものでA68と名付けられました。この棚氷は2016年から分離が始まり、現在、南大西洋を漂流していますが、英国領サウスジョージア島に衝突の可能性が濃厚となっています。棚氷が島に乗り上げると生態系に大きな影響を与え、場合によっては10年以上融けないケースもあるそうです。この棚氷が融けても海面上昇に影響はありませんが、このような現象の起きる原因も地球温暖化と考えるべきです。
永久凍土の融解
永久凍土はアラスカ・カナダ・欧州北部・ロシアにまたぐ北半球の約25%の地域に分布しており、炭素をはじめ強力な温室効果ガスであるメタンガスや様々な有機物が大量に含まれています。炭素の貯蔵量は1兆7,000億tと推測されていて、現在大気中に存在する炭素の2倍の量になります。地球温暖化の影響で既に永久凍土の融解は進行しており、このまま進行すると大量の温室効果ガスが大気中にさらに放出され、温暖化の進行が急加速する可能性が高く懸念されています。是非、インターネットの地図(衛星写真)でシベリアの永久凍土地帯を見てください。永久凍土の融解の現状が目で確認できます。その進行スピードは恐怖さえ感じます。
永久凍土の融解は、氷に閉じ込められていた病原菌やウイルスの放出につながる恐れがあり、これは既に現実のものとなっています。2016年シベリアで子供が炭疽(たんそ)症により死亡、これは70年前に炭疽で死んだトナカイの死骸を埋めた永久凍土の融解が原因と科学者が指摘しています。WHOは1980年天然痘の世界撲滅宣言をしましたが、永久凍土に埋葬された昔の天然痘患者の墓や、永久凍土の中で眠っている他の病原菌も活動を再開する可能性があると警告しています。
氷河が消滅する
2019年4月30日、IUCN(国際自然保護連合)によると、2015年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で掲げられた温室効果ガス排出量の削減目標が達成されなかった場合、ユネスコの世界遺産に登録されている46の氷河の状況を調べたところ、半数近くの氷河が、今世紀末までに消滅すると発表しました。
またパリ協定が達成された場合でも、46氷河のうち8氷河は2100年までに消滅すると発表されました。この8氷河は既に我々人類が排出した温暖化ガスの貯金によって消滅が確定しているのです。これが意味するのは? 温暖化ガスの排出と実際の影響の現れには時間差があるということです。100%無理な話ですが、今から温暖化ガスの排出をゼロにしたとしても、改善を実感できるのは早くても10年・20年先になります。パリ協定が目指す2050年は中間目標で、人類・社会が進歩する限り、人類は永遠に温暖化と向き合う必要があるのです。
氷河から融け出す水は、流域の人々の貴重な水源になっています。氷河は自然のダムと考えるべきでしょう。アジアのヒマラヤ山脈には世界の氷河の14.5%が存在し、20億人の貴重な水源となっています。もしこの氷河が消滅したら、アジアの多くの人々の暮らしが危機的状況になり、この影響で1.5mも海面上昇になると言われています。アフリカ最高峰のキリマンジャロの氷河は、1912年~2007年まで95年間で85%が減少しており、早ければ2022年、遅くとも2033年には消滅すると予測されています。氷河が消えて水を得ることができなくなれば、作物・家畜を育てることができなくなり、深刻な食糧不足に陥ります。
地球の自然のサイクルでも氷河は消滅しますが、産業革命~現在に至るまでの消滅のスピードは早く、人為的な温暖化ガスの排出が原因であると多くの研究者が訴えています。
世界各地で最高気温を更新し~南極でも20℃超え
先に述べましたが、南極では最高気温の更新が相次いでいます。2020年6月20日に、ロシア・シベリアのサハ共和国・ベルホヤンスクで気温が38℃に達し、6月の平均気温よりも16℃も高く、北極圏での過去最高気温を記録しました。サハ共和国・ベルホヤンスクは永久凍土の分布域で、永久凍土の融解進行が懸念されます。
2021年8月11日に、イタリア南部シチリア島の南部フロリディアで48.8℃を観測し、ヨーロッパ史上最高気温を記録しました。イタリアを襲った熱波の原因は、ルシファーと呼ばれるアフリカからの高気圧の影響で、ルシファーはイタリア本土を北上し、イタリア南部では山火事が拡大、シチリア島・カラブリア州・プーリア州で12時間の間に300カ所以上の火災が発生しました。
これは一例で、世界中で気温上昇が顕著になっています。現在は猛暑日と聞いても驚くことはありませんが、今世紀に入ってからでも年間の猛暑日は急増しています。Y世代以上の方は体感として猛暑日が増えていることが判るはずです。産業革命以降1℃の温度上昇でこの違いがあるのですから、将来、2・3・4℃上昇したことを考えると恐ろしくなります。
これは越境会というサイトの動画チャンネルですが、実例をまじえた分かりやすい内容なので紹介します。時間がある方は見てください。
気温上昇により海水温も上昇~線状降水帯や日本近海でのスパー台風発生も
近年、梅雨末期に線状降水帯による災害が全国で多発しております。2020年・2021年は台風による大きな災害はありませんでしたが、2019年9月~10月に発生した台風は激甚災害指定されるほど全国に被害を与えました。
最初の大きな被害は8月30日に発生した台風15号で、写真は甚大な被害をうけた南房総市の様子です。ほとんどの屋根がブルーシートで覆われ、2年たった現在も修理が終わらない家屋もあるそうです。10月1日に発生した台風19号では関東・北信越・東北の71河川が決壊し、10月16・17日に発生した台風20・21号は19号の被災地に更なる被害を及ぼしました。千葉県でゴルフ練習場のネットが近隣家屋に倒れたり、長野県で千曲川の氾濫で新幹線が水に浸かった映像を思い出します。私自身、はじめて窓ガラスを養生テープで補強し台風を怖いと感じました。ホームセンターでは養生テープやブルーシートが品切れになり、テレビの情報番組で養生テープの代用品を紹介するほどでした。
台風銀座という言葉があります。沖縄・九州・四国・近畿地方南部にかけて台風が上陸しやすいという言葉ですが、近年は上陸が東(東海・関東)にずれてきています。これは台風の発生場所が東にずれているからなのです。これまで台風は海水温の低い日本近海に近づくと勢力を弱めましたが、近年は日本近海の海水温が高いため勢力を維持したまま上陸するケースが増えています。このまま温暖化による海水温の上昇が更に進めば、日本近海で急速に発達するスーパー台風も懸念されております。2013年にフィリピンを襲った台風30号(ハイエン)は上陸時895hPa・最大瞬間風速102.7m/sで、台風が通過した地域は3.11を彷彿とさせる光景となりました。これは津波ではなく高潮と風による被害なのです。
環境省が2019年に作成した2100年のバーチャル天気予報を紹介します。これは温暖化対策が実らなかったケース(4.8℃上昇)とパリ協定が履行され温度上昇を1.5℃以下にコントロールできたケースの未来天気予報です。夏版・冬版がありますが、注目すべきは1.5℃以下にコントロールできても、現在よりも気候変動は進んでしまう点です。
2100年温暖化防止(未達成・達成)夏編
2100年温暖化防止(未達成・達成)冬編
世界的な森林火災の増加
宇宙からも、はっきり確認できる森林火災や泥炭火災、2021年もアマゾン・北米大陸・南米大陸・アジア・アフリカ・ヨーロッパ・・・すべての大陸で森林火災が頻発しています。その原因は乾季と熱波で地球温暖化が関係しているのです。
2019年9月から発生した「オーストラリアの森林火災」では、10億匹以上の野生動物が犠牲になったと言われています。オーストラリア史上最悪の森林火災となった原因は? ①2018年末から2019年春までの降水量が極端に少なく乾燥した事 ②油分の多いオーストラリア固有の植物 ③記録的な高温(48.9℃)これらが原因となり秋に100ヶ所以上の森林火災が発生し翌年まで拡大しました。その後3月には5日間で年間の半分に値する豪雨になり、まさに異常気象(気候危機)の年となりました。2019年に降水が少なかった原因はインド洋のダイポールモード現象で、太平洋でのエルニーニョやラニーニャにあたる現象です。雨が少ない東アフリカでは豪雨となり、植物の急激な増殖によりトビバッタが異常発生、トビバッタは国境を越えて移動し、東アフリカ→中東→アジア(パキスタン・インド)にまで広がり農作物に大きな被害をもたらしました。オーストラリアの森林火災と東アフリカのトビバッタ異常発生には関連性があるのです。
以前からオーストラリアでは森林火災がありましたが、これほど大規模な火災はありませんでした。これも地球温暖化?が原因とニュースで報じられていますが、COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)が始まって25年、常に経済を優先させ脱炭素化を進められなかった人類への代償といえ、その代償は他の生き物の命をも脅かしています。泣き叫ぶコアラのを見るのは耐え難いですね。
世界気象機関(WMO)とNHKが作成した2050年のバーチャル天気予報です。少し面白かったので最後に紹介させていただきます
不都合な真実2:放置された地球(本編抜粋映像)
■アル・ゴア氏(71歳)
ビル・クリントン政権下では副大統領として、2000年には大統領選にも立候補しましたが、ジョージ・W・ブッシュ氏に敗れ政界から引退、その後は環境活動家とし活躍し、2007年にはノーベル平和賞を受賞しました。
団体立上げの仲間・協力者を募集しています。地球温暖化に関心の高い方、危惧されている方、何か活動したいと考えている方、ぜひご協力ください。